「悪人」を見た。

同居人の橋本が見たがっていた「悪人」を西新井の映画館に見に行った。
うーん、となる。
色々と気になる事が多すぎる。そうなのか、と何か落ち込む。これくらいで良いんだろうな。こういうのは。なんか人を抉って描いているような評判だけど、そうなのか。これで良いのか。つまり人殺しのことを描くのに、これほど音楽を鳴らすのかという気持ちがある。役者は実力ある人が多く出ていたし、光石さんはとても良かった。皆がアップに耐えるほどに役者としての力を発揮していていた。でもやっぱ気になるんだよ。妻夫木さんの不条理さが足りない。深津さんの淫乱さが物足りない。被害者の遺族の柄本さんの分量が多すぎる。色々気になる。蹴り飛ばした大学生役の岡田くんのそばにいる友達の佇まいは都合がよく、本当に意味不明。「悪人」を描く為の、様々な悪意が足りてない。監督に悪意がない。どうしても抉られない。たとえば新井英樹の中に出てくる業に塗れた人間臭さが出て来ない。何故か綺麗になっていく世界。ユートピアのような灯台の平凡さ。違うんだよ、見たかったのは。孤独って変態だよ。あと、運についても触れて欲しかった。なのに綺麗な音楽が流れてくるんだよ。何だよ。まったく。前半は期待感があったんだけどな。やっぱり自分には物足りなかった。これならもっと最初から綺麗ごとが見たいよ。なによりも抜け落ちていたのは妻夫木くんが働いている現場の描写で、もっと描くべきだったことだと思う。同僚とか。
ただ、樹木希林さんの沈黙には加害者の家族に流れている時間を感じさせられた。
この映画は映画の時間がうまく流れていない。「悪人」の最後で深津さんが吐き出す言葉のためには二時間強じゃ足りないってことだ。
よし、見てみるか。「ヘブンズ ストーリー」を。