横浜さんとユーロスペース

横浜聡子さんの映画「真夜中からとびうつれ」と「おばあちゃん女の子」を見にいった。
二本ともよかった。生きている映画、冒険している映画、呼吸する映画。ものの見事に、自分の生理にはストンと落ちて、それが嬉しかった。
役者さんを活かすのが本当に上手な人だとおもう。面白いと思えるものを作れる数少ない人です。
特に「おばあちゃん女の子」の主演の女性がほんとに美しかった。もっと見ていたかった。上映後に久しぶりに会った横浜さんと話をして、帰路についた。

で、きょうは休日といえるような日がようやく訪れたので、ノンビリしていた一日だった。
でもいま撮っている映画のシナリオが書けていない部分を書いてた。
なんだか分からないけど、話すべき事を探しているのです。伝わらないのは辛いので、工夫をして見つけたい。明日は大事に過ごす。そういう日にしたいと思っている。

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

124740561255216224636_uchiagehanabi-2.jpg
小学校六年生のとき。
岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』をテレビで見た。それはタモリさんのテレビ番組で、その日は、父親の帰りが遅くて、珍しく遅くまで起きていたような記憶がある。なにげなく居間のテレビは点いていて、父親が帰宅したあとも、最後まで見せてもらって、とにかく僕は感動していた。なんでか分からなかったというのが素直な感想だったけど、でも夢中になってそれを見て、花火大会に行った事がない自分は花火を見たことがなかったし、花火を主人公たちが見れたことに感動していたのだし、引っ越していくこと、両親との距離、離れるだろう友達との距離、転校生だった自分はそういうもんにドキドキして眠れなかった覚えがある。
その日は、父親がもらってきた土産の寿司をたべて穴子が美味しかった。いろいろと覚えている、不思議な日だった、というような感触がある。とにかく感動したそれについて学校で話すことはなかった。大事なことは秘密にしておく、というか、人に話したくなんてないのだった。両親にだって、大事なことは話さなかった。よくわからないけど、そういう風にしていたのだと思う。
今年の夏は、生まれてはじめて花火を撮影したのでした。目の前に現れる、なくなる、その繰り返される刹那を長い時間見つめていたら、星を見つめるのと同じように、人がいて、いなくなる、というような当たり前のことを考えてしまって、でも、その当たり前に何故かとても感動しているのだから、やはり変わらないもんってあるのだなと、何気なくそういうことを発見して、だからこそこの気持ちの分からなさというもんに対して、いまも動かされ続けている自分のことを思って、ふと、その当たり前こそ自分が対峙していくもんなんじゃないかと、そんな凄く単純な気持ちになったのは、何でもない発見だったと思っているのです。当たり前のことを、シンプルにやればやるほど、わからなくなっていくし、何でもなくなっていくけど、それを恐れる必要は感じないし、やはり個人のその風景を美しいと感じたい。それは例えば、先日の飴屋さんの舞台『じめん』においての、石を投げる少年の姿だし、でんぐり返しを繰り返す飴屋さんの身体だし、風に揺れる木々の葉だし、その光景のひとつひとつを確かめるように、装飾せずに、自分も見せたいと思っているし、それを見たいとおもう。それを、そのままで。きっと目の前には大事なひとがいたし、あったし、それがいつか消えてしまっても、そこには絶対にいたし、あったという、そのことを美しいと、絶対に思っているし、言いたいし、見せたい。だから、嘘をつくためには嘘をつかないように、そういう欲望を、その映画から受け取った。
いまだにうまく何かをいうことなんて出来ていない。
僕は被災地をカメラで撮らない。ただ撮らない人間だというだけだ。
友人や、愛する人、その間にあるもんを見つめたい。
大切なひとのことを考えるのは難しく、それはそのまま作品になるとおもう。

横浜聡子さんのコメント

onnnanokonobou.jpg
女の子がいた。
公園で歌われていた平和の歌には見向きもせず、棒を拾って、通りを行き交う車を見ていた。
素晴らしい。
映画監督の横浜聡子さんと6月にアフタートークで話した事がとても支えになっている。
そして好きなものが似てて仲良くなりました。とても多忙な方なのにわざわざ俺の映画に言葉をくださって、とても嬉しいです。ありがとうございます。
ちなみに横浜さんの新作『おばあちゃん女の子』が11月に公開されるようです。
以下、横浜さんが映画にくれたコメントです。
ーー映画『生きている』について
「好きな人やものが多すぎて 見放されてしまいそうだ」って椎名林檎さんの曲でありましたよね。
今野さんの映画を見ていて、この歌を思い出したんです。
今野さんは多分好きなものがいっぱいあるんでしょうね。人、動物、街、とにかくいっぱい。
その好きなものたちを映しながら、未来にもそのものたちが形を変えてでもどこかに息づいていますように、って願っているように思えました。願う姿は、あくまで慎ましやかで。
映された淡い瞬間が寂しかったです。
でもだからこそ、そういう瞬間を自分も決して逃しちゃいけないと、強く思いました。
そんな映画でした。 
ーー映画『信じたり、祈ったり』について
大人たちと子どもたち。
みなの目の前には、きっと「今」しかない。
今しかないからこそ、なにかに執着しながらも、忘れてゆく。
執着と忘却の間、大人と子供の間を、皆がふわふわと行ったり来たりしていて
他の人には見えないその”間”を見ている監督は、
おでこに第三の目を持っているのだろうと思いました。
横浜聡子さん(映画監督)

『ジャーマン+雨』

original.jpg
最近、いろいろと映画を見るけど、そうなんだろうけどねって、大変つまんない思いを頂いて大変ヤサぐれておりましたが、ボッコボコの映画に出会ったのでした。『ジャーマン+雨』は守られていない。つまり映画に守られていない。堂々と映画を前進させてやろうという、その行為、この存在への意思が漲っておる。だからボッコボコ。なんだか、手法で、歴史で、長回しとか、いろんなことで語れちゃう、守られている、芸術ぶって傷をひけらかすカッコつけ野郎たちには唾を吐きたいです。さようなら。
これがここにいる事、やっぱそれでしょ。で、人でしょ。
光らせたい。だから、壊したくもなる。
小津さんがあの手法を徹底したこと、それを現在と共に向き合う『東京公園』の美しさを思い出していたり、とにかく面白い映画を見たいなと思っておるだけですね。
素晴らしいものを見たいですね。
煙草を吸う。コーラを飲む。おわり。

『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』

chiemi-thumb.jpg
『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』をみた。
最初からずっと良い。なんて激しいんだ、女性ってのはやりきる、って別に、差別的な意味合いじゃなくて、だいたい女性の作品に心動かされる事が多くなっているのだから仕方がない。
横浜聡子さんのこの作品のなかには記録されていく人の姿がある。
乱暴だけど、見つめる目がじーっと強く見つめているように感じるから、とても登場人物の目とかに視線が奪われる。反射している。強かったりするその目をどこかで見た事がある気がしていたら、その白い景色に見覚えがあるような気がして、でもそこは日本ではなくて、ソビエト、ロシアとかだったから、もはや変な感触だけが残りながらも、ただ意味ありげなもんはひたすらに一直線で、ドライブする女性の顔とかをただ見つめる視線とか、そのカットはばっさりいくし、登場人物を包み込んで世界に救わせたりしない。ただそこにいる女性が、わからないままで、物語に回収されていく絶妙な技巧だとかからはほど遠い、そりゃそうだ、安住できんし甘えないんだよなと、頷くだけしか出来ず、記録としかいいようのない、憤ったもんが映し出されている。
建物や人物がそこにある。正直だ。
なんて面白い、とだけ思って映画館を出ていく。はっきりとわからないけど、やっぱり、あの映画、あの白い景色の中にただただいた少年や少女のまなざしに似た、主人公の視線に心が揺れていた。
切ない顔とか全然しないんだよ。女性監督は強いよ。ただ見てるんだよ。甘えないんだよ。
だから、横浜聡子さんの映画は俺のなかで面白いもんであり続けている。
だから、見てよかった。おわり。
横浜さんに挨拶をして帰る。わざわざ映画館の外でチケットを持って待っててくれた。嬉しい。
渋谷はめずらしく嫌な街じゃなかった。

『東京公園』

110331_tokyopark_sub1.jpg
『東京公園』という青山真治さんが監督した映画をみた。
こんな書き方じゃヘタクソで雑かもしれませんが、真っ当な素晴らしい映画でした。
向き合ってやっていこうとおもう。諸々。感涙。
とにかく榮倉奈々がメチャクチャ良かった。見事な一番バッターだった。
撮影は月永(雄太)さんだし、音響は菊池(信之)さんだし、もう最高。
前からきりとれ。
そして向き合え。
で、明日は横浜聡子さんが監督した『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』である。
先日、アフタートークで来てくださった佐々木敦さんがツイッター上で、 
「特に僕的には、小学生の姉妹が主人公の『信じたり、祈ったり』がとてもよかった。横浜聡子のこっくんぱっちょや瀬田なつきのとどまるかなくなるかと並ぶ、コドモ日本映画の傑作だと思います」
と書いてくれてから、未見のそれがどんな作品か見たかったのです。
見ます。楽しみです。

三度目のミクロコスモス上映会

yokohamasan.jpg
茅場町、京都、そして今回は渋谷での三度目の上映会でした。
腰がかなり痛くて会場の中で一緒に映画を見れませんでしたが、無事やれてよかった。
宮沢(章夫)さんの舞台で一緒にやらせてもらった杉浦さん、川口くんと宮崎くんとドラマトゥルクの石原くん、夢ちゃんや相馬さん、そして出演してくれた人や今度の舞台の出演者などが会場に来てくれた。
ありがたいです。
皆さんに気に入ってもらえたみたいで励みになります。
アフタートークには映画監督の横浜聡子さんが来てくれた。
初めてお会いしたのですが、なんだかとても話しやすい方で、作品のことをとても気に入って褒めてくれて嬉しかった。話す前は緊張していたのですが共通することも多くて、上映会後も近くのお店で終電近くまで一緒に喋って、いろいろと刺激を受けてほんとに楽しかった。良い出会いが出来てよかったです。舞台の稽古にもこっそり来てくれるみたいなので、ぜひこっそり見てもらいたいです。
普段好きな映画にあまり出会えない自分にとって、横浜さんとの出会いになんだか救われるような気分を味わったのでした。カサヴェテスの話も出来ましたしね。
あーよかった。
明日から本番まで稽古は続く。まずは腰です。頑張らねば。

『カラフル』

colorful.jpg
さすが!!
論理が負けてゆく様をとくと見る。構成が情緒の強度へ。
原恵一さんの志の高さに感服して、そのブレなさにただただ呆然とする鑑賞となる。『カラフル』の持っている圧倒的な肯定力によって、誰かがこの作品をどこかで見ているという事こそが希望になるような、そんな甘い気分になっていた。土手もロマンティックだった。少年はここにいる。
「生きてる?」って、聞かれるよ。
ブルーハーツも流れるよ。
ハノイハノイでバストリオの会議をする。
いろいろとメンバーの想像力が足りてない気がする。その先への。俺も含めて。
もっとやるべき事がたくさんあるのだから確認しながら進んで行くしかない。
『絶対わからない』という作品がまずはある。六月なのでそれへ向けて、そしてその公演中に一度だけやるパフォーマンス作品『わかる、気もする』というのを予定していて、それの内容とかをちょっとだけ話して決める。
これはたいした事はないけど、楽しめるもんをやりたいということで、あと、美味しいもんをお客さんに食べてもらえる公演となっています。主な出演者は男がメインになるでしょう。
色々と内容への思考は高まっているけど、橋本和加子のことだけがまったく分からないのでした。まだ、まったく頭のなかで登場してこないということです。はやく稽古が始まってくれないかとイライラしている。もう出したいぞ。色々と全部。そんで見つけてこね回したい。はやくやりたい。待つしかないけど。
うーん。こつこつと。焦っても仕方ないのだろう。

『ファンタスティックMr.FOX』

101021_FANTASTIC_main.jpg
一人。日比谷線で銀座へと向かう。
映画を見ようという気持ちがあるのです。踊るような気持ちで向かいました。
だって待ちに待ったウェスの新作です。やっと来ましたよ。
この速度、間、ディティール、音楽。
ファンタスティックったらないぜ、ひゅーっ!!!
やっぱ最高だぜ、ウェス!!!
これだけ客を満足させてくれる監督が、今もまだ若く、この後もやってくれるだろう未来を想像するだけで、はっきりいって泣けてくるではないですか。ああ、よかった。ほんとよかった。いてくれてありがとう。
頑張ろう。絶対やってやろう。