Rock and Roll
#3
Rock and Roll あなたにとって大切なのはココロ
2012年1月27日 – 2月1日|新宿眼科画廊
今野裕一郎
出演
狗丸トモヒロ
大沢まりを
上村梓
今野裕一郎
名児耶ゆり
橋本和加子
萬洲通擴
平石はと子
石田美生
小林光春
宮崎晋太朗
音楽|杉本佳一(FourColor/FilFla)
衣装|安食真+告鍬陽介
宣伝美術・web|児玉悟之
演出助手・音響|澤田栄一
演出助手・照明|石田美生
演出助手|小澤薫 宮崎晋太朗
記録写真|松下壽志
記録映像|黒澤聖覇、田崎恵美、逵真平
制作協力|鹿毛綾、北村恵
制作|橋本和加子
主催|バストリオ
そこはライブハウスだったけど、荒野でもあって、間違いなく日本だった
ある日、彼女は泥棒になった なにもなくなったその場所で、音だけが鳴っているそんな景色のなかで、彼女は泥棒になった なんの悪気もなかったし、べつに理由もなかった。そのココロだけが、彼女を動かしていた そんな彼女も盗まれた。それはカミサマの仕業だ なす術もなく、いつも盗まれては移動するそれらを、ただ見つめていた そんなふうにしながら間違いなく彼女はあたらしい朝を迎えるのだった 音を出す身体。その震えるココロ。わたしはスピーカー
俺は音楽をよく聴きます。
そしてその時、様々なことを考えることもなく、あっけなく時間は流れていきます。
そういった時間について考えていましたし、何にせよ、大切な人について考えていました。
こことそこ、そんなに遠くはない、でもそれはやっぱり距離だし、わからないから考えてしまう。
ある女性に頭で話さないで心で話して欲しいといわれた事から始まった作品です。
その頃、何度も「ホワイトアルバム」を聴いていました。ビートルズの心が離れてしまっていたときも繋ぎ止めていたのは音楽です。でも、そんなビートルズも音楽をやるのと同じように、解散も選びます。それはいまを更新していくようなことで、どちらも同じ事だとおもいます。全部一緒だなと考えていました。生きるとか死ぬとか。でも、生きることは素晴らしいとおもう。
音楽は残ります。素晴らしい音楽のこと、それを聴く身体のことを考えます。ここにある、いる身体。それを見つめること、稽古場にある身体、いまが置き去りにならないように、やはりそれはいまを生きるということで、楽しいと感じたいとおもいました。それは楽なことじゃない。
俺が大切にしたいものを大切にしたら作品はこうなりました。
無理矢理ではなく、ひっそりと、丁寧に、わからなくても、伝えようと言葉にして声に出したい。
身体は揺れを感じました。そして転がされました。時間が止まってしまいました。
だから奪い返しにいこうとおもっています。
そしてまったく動かない身体の奥の方には、いまも動いている何かがあると感じます。
彼女たちはここにいる。それはいまです。
まあ、作品がすべてです。やりたいことをやるだけです。見に来てくださってありがとうございます
今野裕一郎(出典:当日パンフレット)
新宿眼科画廊にて、バストリオ『Rock and Roll』初日。今野さんとアフタートークをしました。そこでも 言ったけど、この人たちがやっていること、やれていること、やろうとしていることを、まず第一に自分は 理屈抜きに非常に好ましく思っているのだなと再確認しました。固まった主題や定まった物語に収まること のない断片的な場面が、心地よい接続と意外さで連なってゆく。ぼんやりと、だが或る切実さをもって浮か び上がってくるのは、とても大切だったかもしれない、どうでもいいものだったのかもしれない何かを、誰 かに盗まれてしまった者たちの、孤独な独白の交錯だ。そこに、音楽、演奏、ロック&ロールという、物語 とも主題とも異なるモチーフが、ほのかに、だが確かなリズムと音調で、鳴り響く。音楽は杉本佳一。通常 より明らかにヴォリュームでかめのサウンドが、しかし見事に演劇と一体化していた。とにかく僕は、バス トリオの役者さんたちの佇まいと台詞の言い方が、大変好きなのだ。幾つも幾つも、理屈抜きにぐっと来る シーンがあった。うまく言えないが、いわゆる演劇の現在形とは無関係な観客にこそ観て欲しい。いや、誤 解を招く書き方でした。宮沢章夫さん直系であるバストリオが「演劇の現在形」に無頓着である筈はない。 ただ彼らは明らかに、戦略抜きにナチュラルに、他とは違ったことをやろうとしていて、やれていると思 う。ミニマルでポストモダンなアメリカ文学の最良の部分の味わいにも似たリリシズム。
佐々木敦(批評家)