一匹のモンタージュ

バストリオの野性 vol.04

一匹のモンタージュ

2022年5月20日-23日|SCOOL


写真|comuramai


作|黒木麻衣、今野裕一郎、坂藤加菜、佐藤桃子、鈴木健太、高橋由佳、中條玲、中澤陽、橋本和加子、本藤美咲
演出|今野裕一郎
音響|岡村陽一
宣伝美術|黒木麻衣、鈴木健太
制作・WEB|橋本和加子
トークゲスト | 佐々木敦、川村喜一
協力|葦の芸術原野祭、uni、galajapolymo、 スカンク​ / SKANK(散歩ソムリエ)、山二つ、シバイエンジン
Special thanks|大森英晶、萬洲通擴、中澤陽のSiri、ツバメハウス、菊沢将憲
企画・主催|バストリオ


会場|SCOOL



[概要]


『ストレンジャーたち/野性の日々』から2年半ぶりの新作『一匹のモンタージュ』。二つの矛盾したものや対立や差異が存在することでそこに生まれる境界線を意識的に捉える「バストリオの野性」シリーズの第四弾としてSCOOLで上演しました。




一匹は一匹、
十でも百でも千でもないです
じっと見つめたらこちらを見たり見なかったりして生きてるということがわかります


わかりようがないんを肝に銘じた
目を瞑ることさえも自由な
四方八方からやってくる
一匹の野性、モンタージュの嵐


[LINK]


『一匹のモンタージュ』特設サイト


【劇評】『偶有性の演劇──太田省吾とバストリオの近くて遠い関係について』著:渋革まろん

[コメント]


山田せつ子(ダンサー/コレオグラファー)
バストリオ『1匹のモンタージュ』を観に SCOOL へ。入り口は勿論、ベランダ、トイレ、事務所のドアがみんな開いていて、出演者らしき人が歩きまわる。楽器、電気コンロ、鍋、紙、ペットボトルが散乱する、とりとめもない場所。キョロキョロしながら椅子に座って開演を待つ。唐突に言葉が、身振りが、行為が交差していく。本人のことなのか、人のことなのか、今のことなのか、過去のことなのか、ここにあそこが訪れる。時間も場所も水平に、薄い紙がズレて重ねられて行くように進む。壁に映像も浮かび、車に乗せられて行先を告げられないまま、でこぼこした道をドライブをしているようだ。


時々、今野さんらしき人がペットボトルを持って空間を横切る。ジャッと床に水をこぼす。立ち上がってザッと上着を脱ぐ。暴力か?うっと息を詰める間も無く、場は不安定な平安に戻る。自分の想像力をジャッジされているような気分、私の眼球はリズムを刻み判断と判断不能が面白くパズルのように組み合わさっていく。このまま夜中まで続きそうで、その旅に付き合いたい覚悟も生まれそうになるが、やっぱりそうはいかないらしい。次はどこに連れて行ってくれるのかしら。その乗り物に乗ってみたい

挨拶文[当日パンフレットより]
今野裕一郎
いつだって感覚がすべて、新しいとか古いとかどうでもよいです。
剥き出しの一匹が目の前に現れるかどうか、狭い世界に押し込められないために。本日は三鷹までありがとうございます。


黒木麻衣
まず、このような時勢のなかお越しいただき誠にありがとうございます。日々あらゆるものから受け取ってこの時間に落とし込んでいます。私は作品を通してコミュニケーションできることによろこびを感じ、上演に関しては観に来てくれる人がいて完全になる感覚があります。この作品が上演されることで更に広がること・展開していくであろうという希望を持ち、いつかどこかで応答があることを祈りつつ。立ち会って頂き感謝します。


坂藤加菜
コロナ禍でバストリオはなかなか都内で発表をする機会がない状態でした。ただ、その中でもおこなった、ワークショップでの出会いや、知床・葦の芸術原野祭の土地と人の存在がとても大きく大切なものになりました。『一匹のモンタージュ』には、バストリオが、参加者のみんなが、その2年間で経てきた様々がごろごろと転がっているはずです。あちこちに感覚をとばしながら楽しく見ていただけたら嬉しいです。


佐藤桃子
ひとりと、ひとりと、音楽と、そこにあるものたち、目に見えているものと、見えていないものとが今、なんだかおなじ質量をもっているように感じる瞬間、それぞれの時間は一定ではなくて、近くにいてもとても遠いところにいる、でもそれは、ここで、 もっと、みてたいと思います。 わたしは、稽古の場に、参加させていただいていました。 ここにいたいとこんなに強くおもったことはこれまでになくて、そこにいれたことが、たのしくて、うれしいです。


鈴木健太
舞台に立っている間は生活で使う自分の名前が一旦はがれる感じがします。その空欄に別の名前が入って何かの役になる時もありますが、その技術は自分にはなく、いつも中間くらいのところに居ることになります。バストリオはそれで構わないだろうと思ってやります。ご来場ありがとうございました。


高橋由佳
私にとって、今やっていることそれぞれは、生きていくためにやっていることです。踊ることも歩くことも、喋ることも、歌うことも、人に会いに行くことも、全部、私の営みです。見たり、きいたり、読んだり、触れること、たくさん考えること、営みです。健やかでいられないこともあるけど、美味しいや嬉しいや楽しいをちゃんと喜んで生きていきたい。今日この帰り道が、よき時間になりますように。


中條玲
普段ひとりでいたら見過ごしてしまうようなことが、ここ、に一緒にいる人たちによって見えてくる。これは何度も思い出してしまうだろうな、という時間が流れる。そんな日々でした。言葉にならない、なにか、が、ほんとうにたくさん起こっているので。ご来場ありがとうございます。目の前に広がる時間に体をうずめてみてください。


中澤陽
モスバーガー、特にモスチキンが大の好物な幼い僕は、いつだったか三角錐状のビンにアクリル絵の具で山(Mountain)、海(Ocean)、太陽(Sun)をモチーフに絵を描いた。そうしてできあがった花瓶は、現在もクラブのような自宅の台所で色彩鮮やかな光たちを屈折させながら飾られている。名前を呼ぶ、質問をする、すると応えが返ってくる。そんな簡単なことのように思えるのにうまくいかないのは境界面が見えていないから? 赦せないことも、赦されないことも、何らかの価値におさめられてしまうから『一匹のモンタージュ』です。気軽に呼んでください。応えてみせます。


橋本和加子
本日はご来場ありがとうございます!
私の4月4日の日記には「もう感情的に生きるのはやめようと思った」と書いてありました。
今日着ている服は高橋さんが教えてくれた谷中のツバメハウスで買ってきました。橋本さんに似合いそうな服があって、と高橋さんが伝えてくれたことがとにかく嬉しくて。すぐに自転車に乗ってお店へ出かけました。私の日々はこのように過ぎていきます。この先もきっとずっとそうなんだろうなと思います。


本藤美咲
ご来場ありがとうございます。これからここSCOOLで起こることひとつひとつの機微が、どこまで大きく広く開いていけるのか楽しみに臨みたいと思います。皆様となにか共有できる感覚が見つけられたら幸いです。