ひとりの人間が山にやってくる。

大きなものや沢山のものに飲み込まれてしまわないように、

山とどう付き合って行くのか、

どう出会うのか、
何をみてるのか、
何を聞いてるのか、

観光なのか、定住するのか、移動なのか、

勝手に自然の中にやってきたその人間は山と話はじめる。

そこにもうひとりの人間がやってきた、セザンヌだった。彼は音楽家だった。
一つのサウンドと、一つのサウンドの連なりが、山へ近づいていくことを夢みていた。

『Mountain of Cézanne』について

バストリオとしては初となる、野外劇を想定して制作された中編作品。2022 年初演。
実際の山を背後に携え、借景することで上演を行う。
音楽家の松本一哉、本藤美咲を迎え、ドラムとバリトンサックスの音が遠くこだまする。
山に分け入る俳優の声、吹き抜ける風、生き物の鳴き声、遠くから返ってくる山鳴り。
これまでバストリオが培ってきた、音楽性の高い上演は、山が織りなす自然と混ざり合う。
借景するに留まらない、その土地の景色を色鮮やかに描きなおすダイナミックな作品。

ポール・セザンヌ(1839-1906)

フランス画家のポール・セザンヌは、伝統的な絵画の約束事にとらわれない独自の絵画様式を探求した。
ポスト印象派の画家として紹介されることが多く、キュビズムの先駆けと捉えられる。
セザンヌは、生涯をかけて何枚もの「山」の絵を描いた。その絵は、旧来的な、単視点からの造形ではなく、
何度も山へ分け入り、あらゆる場所から見える山を一枚のキャンバスに落とし込もうとした。
彼の描く「山」はまるで「海」のようでもある。
そんなセザンヌの山を描く際の態度に着想を得て、
山に向き合い、山へ分け入り、山と一体となろうとする人間の姿、
それでも眼前にあり続ける山の美しさを、言葉と音のスケッチによって描く。

公演履歴

『セザンヌの神鍋山』

*豊岡演劇祭 2022 フリンジ参加プログラム『滝ヶ原芸術祭ツアー 2022 in 豊岡』内にて
写真|田中哲哉

会期|2022年9月17日 -18日
会場|神鍋山・嘉一郎ハウス

作・演出|今野裕一郎
作 |中條玲、橋本和加子、松本一哉、本藤美咲

『セザンヌの斜里岳』

*葦の芸術原野祭にて
写真|川村喜一

会期|2023年8月5,11,16-17日
会場|川村邸〜北暦の原野

作・演出|今野裕一郎
作 |中條玲、橋本和加子、松本一哉、本藤美咲

特別出演(8月11日)|坂藤加菜、黒木麻衣

『セザンヌによろしく!』

*第14回せんがわ劇場演劇コンクール出場作品
グランプリ、オーディエンス賞、演出家賞、俳優賞を受賞
写真|青二才晃

会期|2024年5月18日
会場|調布市せんがわ劇場

作・演出・出演|今野裕一郎
出演 |黒木麻衣、坂藤加菜、中條玲、橋本和加子、松本一哉、本藤美咲

プロフィール

演出|今野裕一郎

1981年生まれ。映画監督の佐藤真と出会いドキュメンタリー映画から創作を始めてバストリオを主宰。全作品で作・演出を務める。舞台、映画、インスタレーション、文筆など活動をボーダーレスに展開し作品を発表。北海道・知床で地元の人たちと「葦の芸術原野祭」を立ち上げ、企画・運営に携わる。コロナ禍に撮影した新作映画が三本公開待機中。

黒木麻衣

1992年鹿児島生まれ。主にグラフィックを主体とし制作する。 「バストリオ」ではアートワーク全般を担当。 上演やワークショップで行われている「クリエイション」に関わり、 描くことにフィードバックしている。

坂藤加菜

1993年東京生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。2019年よりバストリオメンバーとして参加。ダンス、演劇、演奏の活動をその都度、隔たりをもったりもたなかったりしながら行う。バンド「山二つ」、ユニット「inter/view」など。

中條玲

1999年長崎生まれ。舞台芸術に出演や制作として参加。並行して、日記やテキストの執筆、植物との関わり合い、調理と振る舞いなどいくつかの取り組みを実施。バストリオ作品は2022年『一匹のモンタージュ』から継続的に参加し、2024年にメンバーとなる。

橋本和加子

1984年大阪生まれ。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科卒業。佐藤真ゼミでドキュメンタリー映画を学び、宮沢章夫が演出する授業公演で初めて舞台に立つ。2010年にバストリオを立ち上げ、俳優・制作・録音を担当。バストリオの配信企画『///(かわ)』ディレクター。葦の芸術原野祭実行委員(北海道・知床)。映画出演作として今野裕一郎監督『グッドバイ』、『ニュークリアウォーター』。菊沢将憲監督『凹/eau』、『二羽の鳥、徹夜祭。』がある。

松本一哉

音楽家・サウンドアーティスト・ドラマー。
環境ごとにあるモノ・造形物・自然物・身体・装置など、本来楽器では無いモノも用いて多様な音表現を行う。自身で起こす音と場所毎に偶然に起こる環境音とが渾然一体となるように働きかけていき、日常の聴き慣れた事象に新たな切り口を与え、音に没入させる即興表現を追究している。
これまでにソロ作品「水のかたち (2015)」「落ちる散る満ちる (2017)」「無常 (2022)」の3作品をミニマル・アンビエントの名門レーベルSPEKKからリリース。
その他リリースに、バストリオのレジデンスプログラム内で制作した「オープン・グラインドハウス(2018)」、TAMARUと津田貴司とのトリオ音源「Amorphous (2021)」、坂本龍一追悼企画アルバム「Micro Ambient Music (2024)」などがある。
偶然に起こる環境音との即興による音源制作を基に、ライブパフォーマンス、サウンドインスタレーション、映画・映像作品・舞台公演・商業施設への楽曲制作、全都道府県を巡る演奏ツアー、今野裕一郎が主宰するパフォーマンスユニット「バストリオ」との企画や公演に参加や、2021年から北海道知床で開催されている「葦の芸術原野祭」の立ち上げから実行委委員として参加するなど、音による表現を軸に活動を展開している。
http://www.horhythm.com

本藤美咲

1992年生まれ。音楽家。 即興演奏と作編曲の二極を基盤とし、多様な分野のアーティストと共演・共同制作を行い日々触手を伸ばす。主宰バンド『galajapolymo』を2018年に結成。他『Tokyo sound-painting』『OTOMO YOSHIHIDE Small Stone Ensemble』『渋さ知らズオーケストラ』など参加プロジェクト多数。